〝The Myth Of 2020〟セルフライナーノーツ

2020年にリリースした僕の3rdアルバム〝The Myth Of 2020〟をサブスクに公開してから2年が経ちました。つきましては、未だに個人的にかなり好きなアルバムであること、また、最初の契約では最低2年は配信するという話だったのですが、2年が経ってもサブスクから消えてないのを記念してセルフライナーノーツを書こうと思います。よろしくお願いします。

 

1.2020

アルバムの冒頭は、当時の自分には珍しくネオソウル・ネオR&Bのような雰囲気を持った曲でした。当時小袋成彬やフランク・オーシャンなどがっつりネオR&Bを聴いていたのもあって、そこからモロ影響を受けているのがわかります。いつもとは違い、DTM的な音をレイヤーとして重ねていくような作り方をしたので、音数をいかにちょうどいいところにまとめるかというところに特に気を配った覚えがあります。また、間奏のサックスソロはLogicの音源を使い、ピアノロールを駆使しながら頑張って本物っぽく聴こえるように作ったのを覚えています。歌詞は見ての通り、コロナが始まってすぐのタイミングでその影響を受けていますが、確かこの歌詞を書く前の日ぐらいにトイレットペーパーを買い占めてるニュースが流れていてそれをそのまま歌詞に入れたのでめちゃくちゃタイムリーというか、今考えるとそれもかなり切なくなります。casanovaのライブでは、前半は同期を使い、後半はバンドサウンドでといったアレンジで何度かやりましたが、サックスソロはない代わりにギターソロを弾いていたそのアレンジがとても気に入っていて未だにまたやりたいなと思っています。

 

2.駅前ラヴ

高3の時に作った曲で、このアルバムの前のアルバムである〝PEOPLE LOVED(2019)〟を作った直後に、〝PEOPLE LOVED / 駅前ラヴ〟という両A面シングルを作ってライブ会場で数枚売ったのを鮮明に覚えています。冒頭のリフは今聴くと台風クラブのパクリですが、イントロの雰囲気なんかは、中3の時に作った「キビヤック」、そして去年作った「シティチルドレン」と同じ線上にある気がして、とても感慨深いものがあります。あと何度聴いても要素が多い...。全部のパートなくては成立しないのですが、今同じ曲を作ってたら、絶対別の曲のメロディにしてるな...とか、要するにすごく勿体無い曲の作り方をしているなと思ってしまいます。また、細かい楽器のことでいうと、この曲は未だにベースを録り直したい。サビとかただルート弾きになってるのすごく勿体無いと思っていて、今ならベースラインもっと考えるのになと思ってしまいます。そういえば「シティチルドレン」の歌詞にも「駅前」が出てきますが、この曲と「シティチルドレン」に関しては、僕の頭の中に浮かんでいる情景が全く同じものであるということをここに示しておきます。

 

3.マジックアワー

これも高3の時の曲。センター試験が終わった後の二次試験対策の補習に参加しながら、授業中に歌詞を書いていたのを思い出します。家にいる時に割とスラスラとメロディが出てきて、なんとなく郷愁系(と自分が呼んでいる)のメロディラインができたので、「家に帰ろうね〜」みたいな感じの歌詞しか当てはまらんな...と思いこの曲が完成したのを覚えています。この前の2曲はドラムが打ち込みですが、この曲は自分でドラムも叩いています。あとなんといってもギターソロのフレーズがとても気に入っている。これは自分が作って弾いた曲のギターソロの中で一番フレーズが気に入っている曲かもしれない。本当に郷愁系(自分が常に目指している「切ない曲」をここで少し完成させられたのかもしれない)のギターソロですね。またこの曲は一応ビデオが存在していて、club GRINDHOUSE主催のサーキットイベント「若者たち」に映像参加した際に、FM.UMORの皆さんに参加してもらい、映像を撮りましたが(僕は逆にユーモアの映像に参加)、僕があんま髭を剃ってなくて、その上めちゃ寄りでスタートする映像だったのでそれが目立ってすごく嫌だったのを覚えています。

 

4.ヴァニラ・スカイ

個人的にこのアルバムのベストトラックの一つ、というかこのアルバムは〝LIFE〟ぐらい全曲好きなのですが、これは〝LIFE〟でいうと「ブギーバック」なんでしょうか...。「ヴァニラ・スカイ」は言うまでもなく、トム・クルーズ主演の映画のタイトルで、確か母からの刷り込みで映画のタイトルだけはずっと知ってたのですが、高校のときかな?初めてちゃんと見て、今では「ミッション・インポッシブル」とかそういう映画で完璧にかっこいい役しかしないトム・クルーズが結構残酷な目に遭う主人公を演じててとても良かったのと、いい場面でビーチ・ボーイズの「グッド・ヴァイブレーションズ」が流れたり(シーン的には全然「グッド・ヴァイブレーションズ」ではない)、シガー・ロスとかレディヘが流れるなど音楽が素晴らしかったこと、また救いようのないラストとか色んな好き要素が詰まった映画だったのもあって、この映画で一曲書こうと初の試みをしてみた曲でした。また、初めてラップパートを作ったという面でも新しい試みをした曲で、韻を踏むことへの難しさとか、同じリズムで単調にラップしても面白くないことを学び、色んなところで歌詞を区切ってみたりすることなど、結構工夫して歌詞を書いたのでめちゃめちゃ苦労した覚えがあります。アウトロのコード進行は今でもとても気に入っていて(このコード進行はあんまり人の曲でも聴いたことがない)、今年リリースした「スンさん」に収録されている「ハスキー」のアウトロでも一部流用しました。

 

5.PEOPLE LOVED

前述の両A面シングルの表題曲だったので一応先行シングル扱い?このアルバムの一つ前のアルバムとタイトルが同じなので遅れてきたタイトルトラック的な扱いでもあります。Dodgyの〝Homegrown〟とか、次のアルバムに前のアルバムのタイトルトラックが入っているの謎で好きだったのでここでやってみたという感じでした(元々曲のタイトルみたいなアルバムタイトルだったのもあるし)。元々イントロにはSEのコラージュがついてたりして今もそのバージョンはサンクラで聴けますが、サブスクに配信するに伴って権利関係的な問題をクリアするためイントロをカットしました。元になったリフはTalking Headsの〝Uh-Oh, Love Comes To Town〟で、このリフを性急な感じのアレンジにして詰め込み系ボーカルにすればとてもかっこいいのでは?という思い込みから作ったのですが、結果的に「駅前ラヴ」と同じく展開多い系の目まぐるしいソングになってしまった曲です。この辺から展開の多い曲を作るのが僕の定番みたいになってきてる感じがありますが、この曲は細かいギターのフレーズとかベースラインはとても気に入っていて未だにお気に入りです。

 

6.季節の真ん中

高1の時に作った曲だったと思います。元はNebo(ネーボー)という高1の時に中学の同級生と一緒にやってたユニットのために作った曲で、ここまで「スンさん」を除く毎アルバムやっている過去の曲の再録シリーズの一つです。この曲を気に入っていたのは、当時の曲の中でも珍しく自分のキーギリギリのところで歌っていた所で、今歌ってもボソボソ聴こえないところがとてもいいなと思ったことがこの曲を採用した理由で大きな部分を占めていたと思います。とてもシンプルな楽曲ですが、自分の楽曲の中で一番綺麗に自然な転調ができた曲だと思っています。ポップソングとしては結構完璧なのかもしれない。このアルバムに収録するにあたって元あったイントロをカットし、メインのリフをフェードインから始めたり、間奏終わりでウィーザーBuddy Holly〟のフレーズを引用したりなど新しいアレンジも加えました。三髙山光でもちょくちょくライブでしましたがかなりライブ映えする曲だった気がします。またやりたい。

 

7.ステレオタイプな恋したい

このアルバムのハイライトになる一曲なのではないかと勝手に思っています。あまり今までやってこなかった四つ打ちのディスコっぽい部分が印象的な曲で、自分で作った曲の中では一番ダンサブルな曲です。今聴くとちょいヨレのリードギター宅録ダンス・ポップぽさが出ててとても良いなと思っています。間奏で一気に雰囲気が変わるのは、僕の「躁鬱曲作り」が出てしまった結果ですが、急な転調からギターソロのフレーズによってサビまで持っていけたのが、個人的にはこの曲のハイライトになっています。アウトロではリード・ギターでEW&Fの〝September〟を流用していますが(サビメロだけでなくイントロのギターフレーズも)、このアイデア岡村靖幸「少年サタデー」の同じくアウトロでホーンが〝September〟を吹いているのにインスパイアされました。歌詞の面についてもかなり気に入っている曲で、なんとなく〝PEOPLE LOVED〟に収録されている「インヴィジブル・タッチ」という曲の延長線上にあるような歌詞だと思っているのですが、Bメロの歌詞(「歴史に残ってなくてもいい〜」)が個人的にはかなり好きです。

 

8.ベイビー・スローモーション

自他共に認める名曲です。個人的な趣味としてアルバムの最後から1個前の曲に終わり感のある曲を持ってくるのが好きで、〝PEOPLE LOVED〟でも最後から1個前に「グッド・バイ、グッド・ラック」といういかにもなタイトルの曲を持ってきましたが、この曲もそういった類の曲です。この曲は、曲の構成がA→A→B→C→D...みたいな感じの同じメロディが出てこないタイプのもので、特にBメロに関しては今までで一番高揚感のあるBメロになってると思うぐらい自分でも自信のあるものなのですが、これを一回しか出さないことに意味があるな...と思いながら作っていたのを思い出します。また珍しくあからさまなビートルズパロディ(間奏での12弦風のギターソロ)をやった曲でもあるのですが、それがうまく自分の曲に溶け込んだ成功例だと勝手に思っています。間奏でいうとこの曲の間奏のベースラインはほぼほぼ即興で弾いた割にはかなり好きなもので、ドラムも自分で叩いたものの中で一番好きな音になっています(プレイも音も、音に関してはドラムだけミックスしてくれた岡田さんの力も大きいです)。この曲のウィークポイントだと思っている部分は大サビの歌詞で、大サビまでが自分の中であまりにも完璧すぎて、どんな歌詞を当ててもしっくり来ず、無難な歌詞に落ち着いてしまったのが個人的には少し悔しいなと思っています。この曲もライブでやるの楽しかった...。ライブアレンジのBメロの髙橋さんのギターフレーズは絶対自分では思いつかないものだったのでとても感動したのを覚えています。

 

9.新しい光

最後の曲ですが、この曲を作った時のことは割と鮮明に覚えていて、当時付き合っていた彼女とギクシャクし始めた頃に曲の大枠ができて、一時的距離を置こうと言われた次の日に全然できなかったCメロのメロディが出来上がったのを覚えています。今となっては別れたことでこんな良い曲ができたので感謝しか残っていません。ありがとうございます。曲全体としては自分の当時持っていたものをほぼほぼ全部出して、その上メロディラインが自分の過去の曲を全部入れても格別キャッチーで、出来た時これ以上の曲書けないかもと思ったぐらい自信作でした。そこからMistyWalkで自分の中で一番良い曲は更新した!と思いましたが、今でもこの曲はMistyWalkの曲と並ぶぐらいのクオリティを持っていると自負しています。今聴いても細かいフレーズやフィルがとても輝いている曲で、ギターとかまだそんなに上手くないのも個人的にはファーストアルバムみたいな荒削りな輝きがあってとても好きです。好きですとかしか書いてないですが、正直それしかいうことがない...。ほぼほぼ閃きだけで作ったような曲ですし、元ネタもほぼほぼない曲なので、うんちく言えるようなこともないですが、出来ることなら10年後、20年後も誰かに聴いていて欲しいと思える曲です。元気出るし。

 

このアルバムは各曲のライナーを見てもらっても分かる通り、高校3年生〜大学1年生にかけて作ったアルバムで、普通の人なら人生の岐路となるような時期ですが、(コロナもあって)自分はずっとふわふわしていた時期だったので、その時期に自分ではかなりソリッドだと思っているこんなアルバムを作れたことに意味があったなと改めて感じました。このアルバムを作るにあたってジャケを作ってくれた伊勢くん、写真を撮ったりCDの製造を手伝ってくれたさていくん、録音を手伝ってくれた岡田さん・髙橋さん、このCDを買ってくれた友人たちにはとても感謝しています。あと2年ぐらいは配信を続けて欲しい。